月まで三キロ (伊予原 新)
この小説は短編集です。
私は買った後に気づきました。
月、3kmという知識を私は知っていたので、親近感が湧き購入してしまいました。
全ての感想を書きたくないので、面白いと思った話だけ感想を書きます。
全ての話の共通事項として、
どうにもならない状況下でもがき苦しみ、前に進もうとする主人公
天文、気象、化石、地学、素粒子物理学の科学者達
とりあえず、予備知識として、
この地区に入るときの道標に「月 3km」と書かれている。
この作家の小説は文章がわかりやすく、読みやすい。するすると頭のなかに入っていき小説の中に意識を短時間に置くことができる。気が付けば、本を読み始めて3時間、4時間が経過してしまう。もちろん、そこに時間経過の意識はない。単純に読みやすく、心に響く話なので、最近読書を始めた方などにはもってこいの本です。
ここからネタバレが入ります。
~エイリアンの食堂~
主人公は妻を亡くした親子。父と娘の2人。
小学3年生の娘(鈴花)は、母親を亡くしたショックで眠れなくなってしまった。
定食屋を営んでいた父は、ある常連客の女性を気にしていた。
娘の鈴花がその女性をエイリアン(宇宙人)であると思い込んでいたからだ。
平日、毎晩のように来店する。声をかけ素粒子物理学の研究者だと知る。
ある時、娘の鈴花が質問攻めにしてしまう。
鈴花:「子供いないの?」
女性:「子供がいる生活を想像することはある。」
「だが、それはないものねだりだよ」
もちろん、この時女性は鈴花のバックグラウンドを知らない。
鈴花が自分の母親とずっと一緒にいたいということも。
食事を終え帰ろうとしていた女性を引き留め、鈴花の父がその女性に対して、母親が亡くなったことや、不眠になったことを打ち明けた。
女性:「ひどいことを言ってしまいましたね。」
「ないものねだりなんて。」
それ以来、彼女は定食屋に来なくなってしまった。
~終わり~
最後まではあえて書きませんでした。
本の中で楽しんでください。
人に希望的観測を抱かせる、この登場人物のこのあとの話が知りたい。と思ってしまいました。